2005年3月20日10時53分に発生した、「福岡県西方沖地震」。
マグニチュード7.0、最大震度6弱を記録、福岡市内各所において甚大な被害を与え、市民生活に大きな支障を及ぼしました。
この被害は福岡市中心部でも例外ではなく、商業施設の外壁の一部剥落や看板の落下などの被害があり、臨時休業する店舗が相次いで発生。
臨時休業を決めた施設の多くは客を外に避難誘導したため、数少ない広場に多くの人が集り、警固公園では周りを見回せないほどの人で溢れ、ただ1つの公衆トイレに長い列ができる事態も発生しました。
日頃からお付き合いのある大名地区自治協議会の方々からも、地震発生後、大名公民館、体育館が避難所として利用されたが避難者が殺到して大変だったことを伺いました。
そこで弊社では今後の災害対策のお役に立てるよう、当時の避難者情報を基にその記録を取りまとめ、報告書を作成させていただきました。
その結果見えてきた現実と課題についてまとめましたので、ぜひ自分ごととして参考にしていただければと思います。
記録誌を上回る避難者数
まずはデータを可視化するため、記録簿を基に避難者数の日ごとの推移を視覚的にわかりやすくまとめました。
※データの作成には地理情報システムGIS(地図や地形データ、航空・衛星写真などの空間情報と、地理的な位置に関連する様々なデータを統合的に扱うことができる情報システム)を使用しています。
具体的には、当時の避難者名簿から、
避難者の住所分布、避難者数及び宿泊者数を日時毎に抜き出し、時系列のグラフを作成。
避難者がどの範囲から集まったのかをマップとして作成。
そこで見えてきたのは、福岡県西方沖地震記録誌に記載されている避難者数よりも実際にはもっと多くの人が避難していたということ。
また、最寄りの避難所ではないにも関わらず他地区在住の避難者が多く集まっていたことも分かりました。
これらのデータから、以下のポイントを意識する必要があります。
有事の際、避難者数の予測は非常に困難である。
当然ながら避難者数は一律ではなく流動的に変化するため、数に応じた対応が必要となる。
人口増加に伴う避難者数の予測
福岡市中央区における、震災当時(2005年3月)の推計人口は165,594人となっており、弊社調査時点の2017年4月における推計人口は195,474人。
(2019年4月現在は200,310人)
※推計人口:国勢調査人口を基礎として、毎月の住民基本台帳の異動状況から算出した毎月1日現在の人口のこと
その数を比較すると、29,880人増加しており、約1.18倍の増加となっています。
同規模震災が発生したと想定し、区域内人口の伸び率から避難者数を予測したグラフが以下。
※紫で示したグラフ
福岡市に関して、人口は現在も右肩上がりに増加しています。
もし再度「福岡県西方沖地震」と同等の災害が発生した場合、当時(2005年3月)よりも多くの避難者が発生することが予想されます。
今後の避難者対策へ向けて考えるべきポイントと課題
福岡市観光統計によると、2016年の福岡市の入込観光客数は2050万人と、5年連続で過去最高を更新しており、このうち宿泊数は727万人となっています。
そのため、福岡市の人口増加だけでなく観光客の増加も避難者の数に影響を与えることも考慮する必要があります。
今後の課題としては、次の2点
公民館の正確な収容可能人数や、観光客数も考慮したより精度の高い避難者数の予測
そこから推定したキャパオーバーが予測される機関の避難者受け入れ方法および必要な物資量の検討
これに加えて、今後はテント村やトレーラーハウス、宿泊施設や会社事務所との非常時の利用提携を行うこと等も検討していく必要があるかと思われます。
まとめ
今回、データを可視化することでより詳細に当時の状況を把握することができました。
福岡市付近では有史以来最も大きな地震となった福岡県西方沖地震。
今後、市内人口・観光客数の増加を念頭においたうえでの対策が求められる時代となってきました。
一方、10年以上の歳月の経過とともに危機感や防災意識が少し薄れているようにも思います。
災害は、いつ何時起きるか分からないもの。
まずは個人個人で災害発生時の避難場所や常時準備しておくべき防災グッズの確認など、今一度再確認してみましょう!
作成した詳細な報告書について、詳しい内容についてご興味のある方はお問い合わせください。
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